大局観/羽生善治

 

大局観 自分と闘って負けない心 (角川新書)
 

 

 再び、羽生さんの本です。

 

 結構羽生さんの本は、将棋の世界にとどまらないモノが多いのですが、この本は割と将棋にフォーカスした感じの本で、羽生さんご自身の対局の中での対処法や対極に向けた準備などの取組や、対局される棋士の方々のアプローチなんかも紹介されていて、将棋に心得のある方は堪らない内容なんじゃないかと…

 

 一流の棋士の方だと、対局にあたってはある程度のプランをもって臨まれるでしょうし、でもだからと言って思った通りに行くことなんてほとんどないでしょうから、その時々での対処も必要となってくるはずです。

 

 それでも大きな流れみたいなものを想定しておくことで、局面局面における対応に取ってもよい影響を及ぼすことが多いようで、森を見ながら木々を見ることを求められるという将棋の難しさを伺わせます。

 

 この本で印象的なのが、わざわざ「負けること」という一章を設けられているところで、当然羽生さん程の棋士の全盛期であっても「負けない」ということはあり得ないワケなので、「負けること」から得るものを大きくすることが強さにつながるという側面は多分にあることでしょう。

 

 その点将棋では、感想戦という対局後に対戦相手とその対局を振り返るということが伝統であり、負けた後に対局を振り返るなんて、傷口に塩を塗るようなモノで、決して心地いいモノではないでしょうけど、アツいうちに振り返りをすることの意義と言うのは相当大きなものであるようで、その意義について語られています。

 

 また羽生さん程の棋士であっても、(というか、そこまでギリギリの闘いをされているからこそという見方もありますが…)ツキや運を味方につけようということもあるようで、それはそれでやはり将棋のハードさを伺わせます。

 

 まあ、自分で将棋を指そうとは思わないですが、ちょっと鑑賞ができるくらいにはなりたい気がする最近でありました。