生物と無生物のあいだ/福岡伸一

 

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

生物と無生物のあいだ (講談社現代新書)

  • 作者:福岡 伸一
  • 発売日: 2007/05/18
  • メディア: 新書
 

 

 分子生物学という通常あまり陽の当たらない分野に人々の耳目を集めさせた2006年のベストセラーが、昨今コロナ禍ということで再び注目を集めているということもあって、手に取ってみました。

 

 ハーバード大学での研究経験もある分子生物学の研究者が書かれた本だということで、小難しい専門書だと思っていたのですが、書評を見るとどれも、あまりのオモシロさに最後まで読まされた的なモノが多くて、ホンマに…と思いながら手に取ったのですが…

 

 実際、オモシロくてやたらとページが進んだのは間違いなのですが、それは専門的な知識の内容がオモシロかったというよりも、おおよそ科学者が書いたとは思えない、含蓄のある、ちょっとミステリーの作家が書いたかと思わせるような文体によるモノのような気がします。

 

 まあ、生物って実は、その定義はあいまいなんですよ…位のところまではついていけるのですが、DNAの形態がどうのこうのとか、それ研究をめぐる研究者間の論争とかは全く理解できないのですが、それでもグイグイ読み進ませる筆力には感嘆するばかりです。

 

 ただ、文体だけで読ませられたというワケでもなく、アメリカの大学における科学者たちの姿勢というか、取組がかなり興味深いのも確かで、かなり経営者的もっと言えば、起業家的な才覚が無ければ、長年にわたり研究資金を確保し続けた上で、研究を継続することは難しそうで、福岡さんが所属されていたセクションは基礎研究的な色合いが強く、なかなかビジネスに直結させるのはムズカシいところはあったものの、そういう分野の科学者ですら、ある意味ハッタリを利かせないと生きて行けないという所がアメリカ的な厳しさを思い知らされるとことです。

 

 モチロン、そういう分野に興味のある人にとっても面白いんでしょうけど、多分読む人なりの楽しみ方ができる融通無碍な、ある意味驚異的な本なのかも知れません。