新版 動的平衡/福岡伸一

 

 

 昨日に引き続き福岡さんの著書で、昨日の『生物と無生物のあいだ』と並ぶ代表作だということがあって、引き続き手に取ってみました。

 

 『生物と無生物のあいだ』の中の1章で動的平衡について触れられていて、興味をそそられたのですが、前著同様、あまりそういう理論的なところは深堀されていなくて、福岡さん自身、そういうスタイルの書き手何でしょうか…

 

 前著と比べると、どちらかというと福岡さんご自身の研究分野にフォーカスされているような気はして、前著とは異なり、研究者たちの政治的な立ち回りについて触れられているところはないのですが、あんまり動的平衡そのものを深めるというよりも、その周辺のトピックを語られていて、言ってみれば右手を描くのに右手の周りを描くといった印象を受けます。

 

 ただ、それぞれのトピックが前著よりもかなりわかりやすくて、かなり興味を惹くものが多いですし、しかも福岡さんの筆力で圧倒的にページは進んで行きます。

 

 この本ではES細胞からiPS細胞が開発される契機についても語られているのですが、生理学的にもそういうかかわりがあったんだということで、そういう意味でも興味は惹かれるのですが、世間の過剰な期待とも思える未来像とは異なり、専門家らしいドライな観点が垣間見られます。

 

 もっとこういう世界を理解した上で読んだら、もっと面白いんでしょうけど、今更なかなかそこまで踏み込めないのが悔しい所ではあるんですが…