君に、世界との戦い方を教えよう/田村耕太郎

 

 

 元参議院議員で、現在は国立シンガポール大学リークワンユー公共政策大学院で教鞭を取られていて、アジアで活躍する日本人リーダーの育成に取組まれている傍ら、世界的な金融・経済シンクタンクであるミルケン・インスティテュートの日本人初のフェローとしても活躍されている方による、グローバル・リーダーの育成に関する本です。

 

 タイトルだけ見ると、個人にとっての「戦い方」という印象を受けますが、確かにそういう要素もあるのですが、どちらかと言うと、日本の国家としてのグローバル・リーダーの育成に向けた教育改革への提言と言った側面が強い内容のように思えます。

 

 そもそも、グローバル・リーダーの育成という意味では、圧倒的にアメリカが独占的な地位を占めていて、ハーバードやエールと言った名門校に世界中から選りすぐられた人材が集まって、そこで切磋琢磨することと、各国のトップの人材の間のネットワーキングといったことを通して、国をリードしていく人材を育成しているワケですが、そんな中でアメリカの名門大学は、その帰属意識も含めて大きな影響力を及ぼしているということです。

 

 いきなり日本がそこに割って入るというのは現実的ではないのですが、この本が書かれた時点で、そういうところに参加しようとする意識すら希薄になってきていたようで、中国や韓国の後塵を拝しつつあったようで、現在に至ってはその差はより拡大しているようです。

 

 せめてアジアにおいて、リードすべき人材育成を志すべきなのでしょうけど、そちらにおいてもシンガポールに大きく後れを取っており、アジアにおいてすら日本のプレゼンスはアヤシくなってきているようです。

 

 国会議員時代にもそういう趣旨で問題提起をされてきたようですが、その頃の危機意識は著しく低かったようで、最近になってそういう気付きはあったようですが、シンガポールや中国の背中は遥か遠くになっていっているようです。

 

 ただ、このまま放置していく訳にもいかないでしょうから、アメリカが中国の人材に受け入れに躊躇している現在、シンガポールなどども共同歩調でアジアにおけるプレゼンスを確保できるようなリーダー育成にいち早く取組べきなんでしょうけどねぇ…