コミカルな語り口で、本来難解な脳科学を分かり易く語ることで知られる池谷先生が紹介する不思議な脳の働きです。
『不自由が心地よい』という章の中で「自由な意志とはいったい何でしょうか。意志は脳から生まれるのではありません。周囲の環境と身体の状況で決まります。-これが私の見解です。そして、この考え方こそが本書の通奏低音となっています。」とおっしゃられていて、自分が自分の意志をもって決めているつもりのモノであっても、実は脳が勝手に反応的な判断の下で行動していることがほとんどだということに驚かされます。
そういう事例を、身近な事象で26種類350ページ以上にもわたって紹介されていてるのですが、一つ一つが興味深く、しかもかなりコミカルに分かり易く紹介されているので、イッキに読まされます。
例えば、楽しいから笑うのか、笑うから楽しいのかということが言われますが、この本では割り箸を加えて口角を広げると楽しくなってくるという実験を紹介されていて、身体的な状態に脳が反応する一例として紹介されています。
そういう機能というのは、脳が1つ1つの「判断」をしていると「反応」が遅れてしまうということで、即座に反応するために脳が備えた仕組みだということで、そういう部分が未だAIが脳の機能を再現することが困難なことの一因と言えるようで、相当な高機能であることを改めて認識させられた一冊でした。