俺の考え/本田宗一郎

 

俺の考え (新潮文庫)

俺の考え (新潮文庫)

 

 

 Hondaの創業者である伝説的な経営者として知られる本田宗一郎さんが、ご自身のお考えを自由奔放に述べられた本があるということで手に取ってみました。

 

 元々この本は『暴言方言』というタイトルで雑誌に掲載されていたものをまとめられたということのようですが、その時のタイトルは本田さんの豪放磊落なイメージから来ているのだと思われますが、この本の中で語られている内容はイメージ通りのダイナミックなお考えだけでなく、イメージに反した緻密なモノもあって、伝説の経営者というのはやはり…と思えるもので、同じく伝説の経営者である松下幸之助さんが多くの著書を残されているのに対して、本田さんはあまり著書が多くないこともあって、貴重なモノと言えるでしょう。

 

 かなり自由に語られていることもあって、取り上げられているトピックはかなり多岐にわたっているのですが、その中には1963年であるにもかかわらず、同一労働同一賃金などの今日でも通用するトピックにも言及されており、その慧眼に驚かされます。

 

 その中でも特に印象的だったのが、技能オリンピックと日本の競争力について語られたもので、細やかな作業を得意とする日本人が技能オリンピックで、当時でも連戦連勝を果たしていたのに対して、割とザツだとされるアメリカには収益力で劣ってしまうというジレンマについて、本田さん自身が如何にしてそういう技能をおカネに替えて行く課題について語られているところについて、本田さんと言うとどうしても技術屋としての側面が強調されがちですが、こういう大きな考えの下に取組まれていたということで、やはり優れた経営者だったんだなぁということを感じさせるものでした。