功利主義者の読書術/佐藤優

 

功利主義者の読書術(新潮文庫)

功利主義者の読書術(新潮文庫)

 

 

 ”知の怪人”佐藤優さんが紹介する”実践的”な読書の方法です。

 

 佐藤さんは再三、特に若い世代に向けた著書の中で、読書を仕事など生きて行く中で具体的に役立てることを勧められていて、特にいわゆる自己啓発本やHow Toモノではなくて、古典や小説の方が、実はそういう意味では”使える”ことが多いとおっしゃっていて、この本でも、いわゆる自己啓発本やHow Toモノは対象とはなっていません。

 

 佐藤さんが再三紹介されているマルクスの『資本論』や、マルクスの理論を純粋に経済学として読み解いた宇野弘蔵氏の著書、また佐藤さん自身が帰依する聖書などを取り上げられているのは”あるある”なのですが、世相をとりまくエッセイ風とも言える酒井順子さんの『負け犬の遠吠え』や、石原真理子さんの暴露本である『ふぞろいな秘密』まで取り上げられているのには、時折佐藤さんが下世話な世界にも通じていることをチらつかせるのは分かったうえでも、心底オドロきました。

 

 特に後者では、石原真理子さんが玉置浩二さんとの交際の内幕を、当事者しか知り得ない具体的なエピソードをつまびらかにすることで、決定的なダメージを与えることになったことが、論戦に勝つためのテクニックのヒントになったと紹介されています。

 

 また、聖書についても、佐藤さんご自身が敬虔なキリスト教信者であるから、そういう部分に意識が行きがちですが、処世術的な部分を取り上げられているのが印象的です。

 

 そういった感じで、交渉のノウハウや大不況を生き抜く知恵、人間の本性を見抜く、果ては実践的恋愛術まで、多くの人が直面するであろうことに参考となる教訓を読書から抽出される方法論を紹介されていて、誰しもどれか一つくらいはリアルに”使える”んじゃないかと思えます。