松浦さんが『暮しの手帳』の編集長在任時に語られた「仕事術」です。
ただ、謙虚な松浦さんらしく冒頭で、
「僕は、成功者でもなく、億万長者でもなく、何か特別な知恵や技術を持っているわけでもありません。その秘訣や方法、またどうやって仕事をすれば、何もかもうまくいくという、ノウハウを伝えるために、筆を持ったのではありません。
たかだか四十代前半の人間が、他人に物申すことがどれだけ愚かなことか。そのような心持ちでいます。どうぞお許しください。」
とおっしゃられていて、どちらかというとテクニック論というよりも、働く上での心構えというか、心情的なモノを中心に語られています。
『暮しの手帳』の編集長に就任されるまでは、おひとりで仕事をされて来られていて、共同作業のご経験が少なく、それなりに葛藤があったとは思うのですが、それでもご自身のポリシーを貫かれて来られたようで、そのご自身の仕事の三原則として、
約束を守る。
時間を守る。
相手を喜ばせる。
というシンプルなものを紹介されています。
シンプルとは言いながら、自省してみるとなかなかこの通りに行っていないことがあったなぁ…と反省させられることしきりで、こういうシンプルな原則を真摯に守るということが信頼につながらるんであろうことを、改めて認識させられます。
そういうシンプルな原則を守る上で必要なことをかみ砕いて説明されているのですが、その要素の中で「健康管理という仕事」を挙げられており、包丁を大事に扱う料理人同様、仕事をする上で重要な「道具」である自分のカラダを慈しむことも重要な「仕事」であることを挙げられているのが印象的で、それを第一の仕事として挙げられています。
さらに第二の仕事として「生活を楽しむこと」を挙げられ、第三としてようやく「仕事をすること」を挙げられていて、心身の充実があって初めて「仕事」の充実があり、「相手を喜ばせる」という大原則を満たすことができるだと強調されています。
そういう風にコンセプチュアルな内容となっていますので、煮詰まった時に原点に立ち返るようなキモチで手に取ってみたい気がします。