日本戦後史論/内田樹、白井聡

 

日本戦後史論 (朝日文庫)

日本戦後史論 (朝日文庫)

 

 

 『日本辺境論』など、鋭すぎる論評で知られる思想家の内田樹さんと社会思想を専門とされる白井聡さんとの対談をまとめた本で、タイトルは『日本戦後史論』となっていますが、どちらかというと日本人、特に指導層のモノの考え方の変遷について語られた内容が中心となっています。

 

 日本の戦後史というと、どうしてもアメリカとの関係が大きな存在感として立ちはだかりますが、お二方がおっしゃられていて興味深い見方だと思ったのが、戦前、天皇が果たしていた寄る辺みたいな役割がアメリカに引き継がれたということで、どうも日本人はアメリカに対して父性みたいなものを感じて、無条件の愛を注いでくれるものと勘違いしているフシがあるということです。

 

 そんな中で、この間もバイデン大統領の就任時に、尖閣諸島が安保条約の範囲内かどうかを確認していましたが、いざとなると中国が尖閣諸島を侵略してきたとしても、日本の小島のために、米軍を派遣するというのはアメリカ国内の世論が持たないから、きっと軍事的な介入をすることはない、と言われてみればとかく当たり前なのに、日本人がそうは信じないことを指摘されています。

 

 しかし、アメリカ自体もそういう事態が起これば、日本が失望して中国側になびきかねないということで、中国のそういう動きを恐れてもいるとおっしゃられています。

 

 それ以外にも日本の指導層が持つ破壊衝動など、ホントだったらかなり恐ろしいんだけど、お二方の話を聞いていると実際にそうかもしれないと強く感じてしまうトピックが連なっており、さながら極彩色の地獄絵図のように思えます。