”知の怪人”佐藤優さんの自伝的な著書で、外務省から語学研修のためイギリスに派遣されていた時期のことを取り上げられています。
佐藤さんは何気に自伝的な著書を多く出版されていて、これまでこのブログでも、高校時代の東欧諸国往訪の体験を紹介した『十五の夏』や大学時代を紹介した『同志社大学神学部』などを紹介しています。
この本では外務省入省2年目に、当時ソ連が日本と友好な関係になく、ソ連国内で積極的に語学研修を受けられる環境になかったことから、ロシア語の語学研修をロンドンで受けることになった経験を紹介されているのですが、ホームステイ先のホストファミリーの息子さんとの交流を中心に描かれています。
佐藤さんは写真なんかを見るとかなりコワモテな印象を受けるのですが、『十五の夏』でも旅先であった同年代の青年と深い交流に至った様子を紹介されていましたが、ホストファミリーの息子さんとは、当時20歳代半ばだった佐藤さんとある程度の年齢差がありながらもかなりディープな交流をされたようですが、その息子さんがご両親に打ち明けられているように、年下であっても子ども扱いせずに一個人として接する態度に魅かれたようです。
最近佐藤さんが高校生くらいの年代の学生への教育に熱心に取り組まれていますが、この頃からそういった素養があったことを伺わせます。
また、ロンドンでの留学当時盟友だった人が、佐藤さんがいずれ組織とブツかってしまうことを危惧されていたエピソードを紹介されていて、しかもその元盟友がその後佐藤さんが収監された際に、外務省側の調査の指揮をとられたというめぐり合わせを紹介されています。
全体を通して、外国で生活していくことのムズカしさとオモシロさの交錯が興味深く、外国での生活の予定がある人や興味・指向がある人は、心象風景的な描写が参考になるかも知れません。