藤原和博さんが、民間出身初の都立中学校校長となった和田中学校の校長を退任されて、橋下府知事当時の教育関連の顧問を務められていた頃の著書で、ずっと以前に紹介した『35歳の教科書』の”実践編”としての位置づけの本だそうです。
藤原さんにしては珍しく、「臨象哲学」と称する考え方を三角錐を上下に2つ重ね合わせた概念図として表し、その中の要素ごとの処し方を解説されています。
2つの三角錐が重なり合う底辺の要素が「生存・生活の場」としての「衣・食・住」であり、上部の三角錐を「理性と行動の領域」と定義されており、頂点に向かう途上に「自己実現の場」としての「遊・学・働」、「哲学の場」としての「真・善・美」という要素を提示されています。
さらに下部の三角錐の頂点に向かう途上に「肉体の場」としての「老・病・欲」、「感情の場」としての「怒・哀・楽」を提示されています。
まあ、こういう様式化というか体系化みたいなのは、やってみたくなるのは分かる気はしますが、なぜ「喜」がなくて「怒・哀・楽」なのか!?というツッコミどころは満載ですが、ちなみに下部の方の解説はホンの少しで、9割方上部の三角錐の部分の解説なのもご愛敬で、あんまり類型化は気にしなくてもよくて、普段の藤原節を堪能すればよいかと思います。
この本が出版されたのが2010年で、バブルの崩壊から徐々に会社一辺倒の社会人生活に疑問が差し挟まれるようになり、藤原さんのようにプライベートの充実を提唱する自己啓発本の書き手も、一定の支持を受けるようになった頃だと思われ、そういった流れの中の1冊と言えるでしょう。
その後、東日本大震災~コロナ禍を経て、プライベート重視の姿勢がかなりの割合を占めるようになったと思えるのは、意義深いところかもしれません。