ファクトで読む米中新冷戦とアフター・コロナ/近藤大介

 

 

 先日2018年の著書である『未来の中国年表』を紹介した中国ウォッチャーの近藤さんの今年1月出版の最新刊です。

 

 タイトルに『ファクトで読む』とあるように、「はじめに」で「親中」でも「反中」でもなく、近藤さん自身が取材されてきたファクトを元に構成されていることを強調されているのですが、普段ヤフーニュースに連なっている「反中」的な記事を見慣れている目からすると、随分と中国寄りの内容に思えますが、そういう感覚こそ日本人に取って現実から目をそらしていることなのかな、と全体を通してこの本を読んでいると感じさせられます。

 

 コロナ禍の対応でより明確になりましたが、それ以前、GDPで中国が日本を追い越して以降、かなりの勢いで中国は日本を引き離していたにも関わらず、人口規模が違うからとか、一人当たりGDPでは…といった感じで、現実に目を向けようとしていなかったことを指摘されています。

 

 それだけではなく、こちらもコロナ禍の対応の差で、より明確になった部分はあるのですが、韓国や台湾との差が詰まっているどころか、行政の質などはむしろ韓国や台湾の方が遥かに上質であると思える状況です。

 

 そういうモノを生み出した原因というのが、どうやら中国との距離感であるようで、

常に中国からの圧迫のリスクと隣り合わせの両国が、常にその危機感の下で政策を遂行しているのに対し、何かあればアメリカに頼ればいいと思っている日本と大きな差ができてしまうのは、ある意味当然の帰結と言えるのかも知れません。

 

 特に日本が危機感を持たなくてはいけないのは、習近平は台湾を併合することをかなり現実的な目標と考えているようで、その一環で、尖閣諸島の占拠も視野に入っており、その際東シナ海の小島の防衛にアメリカが介入することも、アメリカの国内世論的に現実的ではないことを覚悟しておくべきということを、ちゃんと共有しておく必要があるようです。

 

 そういうフツーの国としての覚悟を取り戻すことが喫緊の課題だということを国民に提示する覚悟が、ゆでガエル状態の自民党政権にあるのでしょうか…