「天下り」とは何か/中野雅至

 

「天下り」とは何か (講談社現代新書)

「天下り」とは何か (講談社現代新書)

 

 

 地方公務員からキャリア官僚に転身し、現在は大学で教鞭を取られている中野さんがご自身のご経験も踏まえて「天下り」を語られます。

 

 ただ、あまり暴露的なハナシというワケではなく、割とプレーンに淡々と「天下り」の実態について紹介されているのですが、元々労働省の官僚だったこともあって、世間の一般的な感覚からすると多少「天下り」批判に対する同情的なスタンスが感じられます。

 

 元々、上位のポストに就けなかった官僚を省内にとどめておくよりも、実務を担う層の若手の官僚が存分に活躍できるように、外部に出すことで組織の活性化を志向していたという側面からできた来た部分があるということなのですが、税金で多数の外郭団体を作って「天下り」の受け皿を維持していたり、利害関係のある企業への「天下り」で産官の癒着が助長されたり、何か所もの天下り先から多額の退職金をせしめる元官僚がいたりと、とかくダークな側面ばかりが目立ってきてしまったようです。

 

 この本が出版されたのは、官僚の天下りを規制しようとする民主党政権が本格化する直前で、天下りの縮小を予測されていますが、結局は官僚の暗躍で天下りの規制自体は骨抜きになってしまったのは良く知られるところです。

 

 とは言え、早期に退職を強いられる官僚にとっては食い扶持を確保する必要もあり、かつ有能な官僚を活用したい部分もあるので、ただただ感情的に天下りを非難するのではなく、国民にとっても有益な方向性を探ってもらいたいところです。