なにものにもこだわらない/森博嗣

 

なにものにもこだわらない

なにものにもこだわらない

 

 

 最近ビミョーにマイブームな森さんが「こだわり」について語られます。

 

 確かにいろいろこだわってそうなイメージがあって、編集者としても森さんに「こだわり」を語らせたくなるキモチはイタイほど分かりますが、例によって肩透かしを喰らっています…(笑)

 

 というのも、可能な限り「こだわら」ないことにしているということなんですが、「こだわらない」ということに「こだわ」っていることになると、トートロジーだな!?みたいなことを語られているのも森さんらしい気がします。

 

 ということで、「こだわ」るということがどういうことなのかを、延々1冊かけて語られるのですが、この本を読了すると「こだわり」のイメージが随分と変わってしまいかねません。

 

 昨今の日本では「こだわり」というと、ラーメン屋のこだわりのスープみたいなのを思い浮かべて、どちらかというと良いイメージを持っている人が多いような気がしますが、そもそも「こだわ」る、ということは、「思考を放棄」してしまうことだと、指摘されています。

 

 というのも、「こだわり」というのは言ってみれば、ある一定のシチュエーションになったら、こういう選択をするということをあらかじめ決めておくということに外ならなくて、例えばラーメン屋の例えばかりで恐縮ですが、必ず味噌ラーメンを注文するということを決めておくということで、ある意味「思考停止」につながりかねない、ということで、そういうことが積み重なれば、頑迷なキャラにもなりかねないということです。

 

 確かに、何かがあるたびにキチンと思考を巡らして、何らかの選択をするというのは意外とメンドクサイところはあるとは思いますが、「こだわらない」姿勢が軽やかなライフスタイルにつながるということもあるようです。

 

 さらには、生へのこだわりなど、死生観に関するところまでハナシは発展しており、肩透かしとは言いましたが、編集者としては望外の深遠な内容になったんじゃないかと感じます。