だから、僕は学校へ行く!/乙武洋匡

 

だから、僕は学校へ行く! (講談社文庫)

だから、僕は学校へ行く! (講談社文庫)

 

 

 『五体不満足』で知られる乙武さんが、教師になられる以前に東京都新宿区の「子どもの生き方パートナー」として活動されたことをまとめられた本です。

 

 『五体不満足』を書かれた後に、大学を卒業されてスポーツライターとして活動されていた乙武さんは、『五体不満足』を経て聖人君子のように扱われることにギモンを感じ(聖人君子じゃないことは、のちにご自身が行動で証明されることになりますが(笑)…)つつ、それにも関わらず社会への具体的な貢献をしていないことにジレンマを感じている最中に教育への関心を強めていた頃にオファーがあり、引き受けられて、その活動の中で教師となる決意を徐々に固められたようです。

 

 この本では「子どもの生き方パートナー」として活動される中で交流した、教育に携わる方々に、その時点での学校教育が抱えるジレンマみたいなものを多く紹介されているのですが、それだけ乙武さんがそういうところに関心を強く持たれていたんでしょうね…

 

 今だったら、完全アウトというコンセンサスが出来上がっていますが、乙武さん自身も少々戦後型の教育を受けてきた世代のようで、ご自身も体罰を受けた経験があり、そのことで学んだことが印象に残っており、寧ろ感謝しているようなのですが、そういう効用がこの本を書かれた2007年時点でなぜ受け入れられないのか、ということについて、お話をされた教育委員会の方に、諭されるように受け止め方の多様性と、それぞれの受け止め方を尊重しなくてはいけない方向へ変化して行ったことを、ご本人が完全にはナットクされていないものの、そういうモノなのかなぁ…というビミョーな受け入れ方をされていたのが印象的です。

 

 そういう風に深く施策を巡らした上で教師をされていたからこそ、教師としての経験が意義深いモノになったんだろうとは思うのですが、それだけにまた教育関連での活動にも復帰して欲しい所ですよねぇ…