将軍たちの金庫番/佐藤雅美

 

将軍たちの金庫番 (新潮文庫)

将軍たちの金庫番 (新潮文庫)

  • 作者:佐藤 雅美
  • 発売日: 2008/09/30
  • メディア: 文庫
 

 

 江戸時代の経済情勢などを題材にした著書で知られる著者の方が、江戸時代の経済史的なモノを想定された本なんだそうですが、あまり体系的なモノではなくて、江戸時代の経済的なトピックを語られた内容となっています。

 

 開国以降の幕末の通貨政策と討幕絡みを描かれた『大君の通貨』で取り扱われていた、日米通商修好条約における為替レートについての合意に向けた内幕や、とかく悪評の高い田沼意次の政策についても触れられていますが、どちらかというと江戸期は、産業の振興と相反して、幕府だったり藩の財政というのは惨々たるものだったようで、出口さんがおっしゃる鎖国による経済の閉塞感や、幕府による大名への参勤交代などの抑圧、”武士道”の悪影響による経済への無関心など、相当国力を損なっていたことが伺えます。

 

 『大君の通貨』でも言及されていたように、積もり積もった通貨政策の悪弊の反動というところもあるんでしょうけど、それだけではなく財政政策の拙劣さも限界だったんだなぁ、と思わされます。