吉野家で経済入門/安部修仁、伊藤元重

 

吉野家で経済入門

吉野家で経済入門

 

 

 この本の出版当時吉野家の会長であった安部さんに、経済学者の伊藤先生がインタビューするカタチで構成された本で、「経済入門」とありますが経済学の理論とかそういう内容は皆無で、どっちかというと「経営入門」ってした方がいいんじゃないかとおもいますが、元々この本の前にお二方の対談本というか安部さんへのインタビュー本というか『吉野家の経済学』という本があったからかこういうタイトルになっているようで、内容としては吉野家の経営についての秘訣を紐解いたモノになっています。

 

 吉野家というとタレへのこだわりが強く、ワインを加えたりとやたら原価がかかった挙句、一時倒産してしまったという位なのですが、そのこだわりが故に、BSEの蔓延で米国産牛肉の禁輸措置の際には、別のルートでの牛肉の入手という手段に頼らず、一時、当時一枚看板メニューであった牛丼の提供を中止するという決断で驚かされたのを記憶していますが、あまりに強すぎるこだわりの産物だったんだなぁ、ということがよくわかります。

 

 さらには、リーマンショック後の不況時における過度な価格競争の際も、メインの牛丼の安易な値下げは当初行わず、安価な別メニューを提供しながら、裏で試行錯誤し、品質を落とさず原価を下げる方策を模索した上での値下げに踏み切ったということです。

 

 そういう太い軸となる「こだわり」を維持しているからこそ、その後、メニューの多様化を図っても、企業イメージがブレていないところが見習うべきところだと思いますし、BSEや値下げ競争を経たからこそ、より強固な軸になったことが伺えます。

 

 やはり企業に取って寄る辺となるべき「こだわり」の重要性というのを改めて強く認識させられる内容でした。