下山の思想/五木寛之

 

下山の思想 (幻冬舎新書)

下山の思想 (幻冬舎新書)

  • 作者:五木 寛之
  • 発売日: 2011/12/09
  • メディア: 新書
 

 

 『蓮如』や『親鸞』など高僧を題材にした小説でも知られ、そういった仏教的な考えに基づいたエッセイなども執筆されている五木寛之さんのエッセイ集です。

 

 この本は東日本大震災前後に書かれたエッセイをまとめた本だということで、ある程度テーマごとに章立てをしてまとめられてはいるのですが、結構パートごとにテーマがかけ離れていることもあって、ちょっと戸惑う部分もあるのですが、「下山」という大きなテーマが底流に流れているようです。

 

 以前紹介した『孤独のすすめ』でも触れられているのですが、一生の中で死ぬまで一貫して上昇気流に乗り続けることなんて基本的にはないはずで、登ったらいつかは下らなくてはいけない日が来るということを認識しておいた方がよい、ということを再三おっしゃられていて、それが認識できない人が少なからずいるからということもあって、日本での自殺率は上昇の一途にあるということを指摘されています。

 

 そういうのって、”足るを知る”ではないですが、ある意味での諦念というか、多くの人は人生の波みたいなモノがあるというのはリクツではわかるはずなのですが、自分にとっては下ることは許せないというか、プライドが傷つくというか、そういう認識を持ってしまうことがあるようなのですが、ある程度のレベルでそういう状況を受け入れないと、かなり不幸なことになってしまうんじゃないかと、この本を読んでいると感じます。