文在寅時代の韓国/文京洙

 

文在寅時代の韓国: 「弔い」の民主主義 (岩波新書)

文在寅時代の韓国: 「弔い」の民主主義 (岩波新書)

  • 作者:京洙, 文
  • 発売日: 2020/11/24
  • メディア: 新書
 

 

 在日韓国二世の政治学者の方が語られる文在寅政権にまつわる話です。

 

 日本人にとっては、文在寅大統領は災厄としか言いようのない相手なワケですが、そういう存在をできるだけプレーンに語ろうというのがこの本の趣旨だと、冒頭で語られています。

 

 よく知られているように、文在寅氏は、大統領から離任後、ご当人にとっては言われのない罪状で追及され自死を遂げた廬武鉉元大統領の側近だったということで、その長い弔い合戦の末に大統領になったということで、韓国の中ではかなり左翼の方に寄った政権と位置付けられるようですが、作者である文京洙さんは、金大中~廬武鉉~文在寅の流れを人権を重視する政権という風に評価されているようで、その間に来る李明博~朴槿恵政権をバックラッシュとまで言っており、自身ではプレーンと言うものの、韓国人の目から見てもかなり左寄りの視点だということを意識しながら見た方がいいかも知れません。

 

 ということで、ある程度文在寅政権の施策を、平均的な韓国人と比較すると高く評価をしているということもあるので、曺國氏の法相起用に伴う混乱や、最低賃金引き上げの失敗など、失政にも多少は触れられているものの、不動産に関連する失政や、北朝鮮との外交に関する蹉跌にはあまり触れられておらず、しかも対日外交については、概ね日本の頑なな態度に言及するのみで、国軍による海軍旗拒否や、一つ間違えれば交戦状態になったかもしれないレーザー照射などには一切触れられておらず、日本人から見ればおおよそプレーンとは思えない感じですし、平均的な韓国人から見ても政権よりと見られても仕方ないスタンスのように思えます。

 

 ただ、政権交代の振れ幅の大きさを見ていると、日本の長期政権がもたらした閉塞感も相当な弊害をもたらしているとはいうモノの、韓国人の知性、胆力、行動力を見れば、もっともっと国力は伸長していたはずなんだろうなぁ…と思うと、何かもうちょっと政権交代が穏やかに行われるような施策が実現すればいいのに…とは感じた次第です。