教養としての宗教入門/中村圭志

 

 

 ここのところ中村さんの宗教関連の著書を連続して取り上げておりますが、今回は宗教全般を対象にした入門書ということです。

 

 冒頭でターゲットとしている読者として「宗教に関心はあるのだが、別に信じたいわけではないという方々」とされていて、まさにワタクシはストライクなターゲットであるようです。

 

 先日紹介した宗教学の入門書である『面白くて眠れなくなる宗教学』と多少被る部分もあって、日本人の「無宗教」についての言及もあるのですが、こちらは宗教そのものによりフォーカスしており、宗教を宗教足らしめているものを、主要な宗教における事例を取り上げられています。

 

 そんな中で「薄い」宗教・「濃い」宗教ということで、必ずしもある宗教の「信者」だからといって、熱心に修行をしているということを意味しているのではなく、なんとなく宗教的なイベントに行くみたいなことも、ある意味その宗教の影響下にあるということだそうです。

 

 「濃い」宗教としてはモチロン、祈祷だったり儀式だったりがあるわけですが、そういう宗教的なしきたりにどういうものがあるのかについて、各宗教において特徴的なモノを紹介されて、その意味合いについて言及されています。

 

 後半部は主要な宗教の概要について紹介されているのですが、一神教多神教について言及されているのですが、特に興味深かったのは東アジアにおけるマルチの信心とも言える現象で、日本における神道と仏教が違和感なく同居しているのと同様に、中国でも仏教と儒教道教が同居しており、そういう現象が東アジアに広く広まっており、そういう複数の宗教を受け入れるというのは、特有の現象だということです。

 

 こういう風に宗教全体を概観するというのは、ちょっと考えてみなかった観点で、そういうことで見えてくるものもあるのかなぁ…という感じでした。