習近平の中国/林望

 

 

 一瞬、あのリンボウ先生習近平!?と思いましたが、どうも別人のようで、朝日新聞の特派員として2011年から5年間北京に駐在されていた方が、その取材経験を踏まえて習近平政権での中国を語られた本です。

 

 習近平が総書記・主席になったのが2012年ということで、就任当初から習近平政権を現地で見られていたということなのですが、それ以前から有力な候補として注目されていたようで、就任前後のライバルとの政争についても言及されています。

 

 よく言われるように、習近平は「中国の夢」を掲げて、毛沢東の理想の実現さらには、アヘン戦争以前の世界に冠たる国家への復活を標榜されていて、対外的には覇権的な志向ばかりが目に付くのですが、毛沢東の理想であるすべての人民を飢えさせないということも重要なテーマにされているということで、かなり国内での支持は高いようです。

 

 ただ、やはりそれでも貧富の差は拡大の一途をたどっているのは否定しがたい所で、如何にして経済的な発展を末端にまで浸透させるかということが、安定的な支持を確保する上での課題と言えそうです。

 

 元々中国では、かなり長いスパンでの発展を標榜されていて毛沢東時代から鄧小平体制を経て緩やかではあるモノの着実に成長を遂げ、現在世界のトップまであと一息というところまで来ているワケですが、習近平体制での急激な成長が歪みを生んでいるところは否定しがたいようで、その原因として習近平の焦りを指摘されていて、そういう部分に成長の陰を見られているようです。

 

 この本では米中関係については、トランプ政権との暗闘の段階で終わっているのですが、現在バイデン政権の極度の反中的な政策と、日本を取り込んでの東アジアでの包囲網や、人権問題をテコにしたEUの取り込みなど、世界中で対中包囲網が広がりつつあり、習近平政権がどのように対応をして成長を志向するのかが注目されます。

 

 尖鋭的な衝突に至らなければいいのですけど…