イタリアワイン秘ファイル/ファブリツィオ・グラッセッリ

 

 

 日本在住のイタリア人建築家の方がイタリアワインにまつわる話を紹介された本です。

 

 ただ、サブタイトルとかを見ているとワインうんちく本みたいに思えますが、どちらかというとこの本はその対局に位置する本で、イタリアの豊かな食文化の一部としてのワインの在り様について紙幅の3分の2以上を占めていて、ワインガイドみたいなモノを期待すると肩透かしにあうかも知れません。

 

 ご自身はミラノ出身なので伝統的なワイン体験はおじいさまの家でのことに限られるのですが、元々は地域で自ら作ったワインを飲むというのが一般的で、村総出でワインの仕込みをするお祭りのような騒ぎだったことを紹介されています。

 

 段々と商業化の波が押し寄せて、さらにはフランスワインの影響もあって、伝統的な製法のワインが減少していくとともに、投機的な取引までが広がって1960~70年代にイタリアワインは危機的な状況を迎えたようですが、最近では復古的な動きもあり、伝統的なイタリアワインが少しずつ復活してきているようです。

 

 ただそういう世界的な流れの影響を受けた結果、悪いことばかりではなく新たな楽しみ方も取り入れられたようで、元々は家庭料理と共に味わう素朴なワインが多かったということですが、フランスワインのようなハレの日に楽しむようなワインも作られるようになってきたということです。

 

 あと、日本人のイタリアワインの楽しみ方について少し苦言を呈されているのが、どうしてもワイン好きの人たちは銘柄とか産地とかを気にして、アタマでワインを嗜むという感じになることが多いようなのですが、ちゃんと自分の舌で味わって、ブランドではなく、自分が好む系統のワインを見つけて、その周辺のワインを”狭く深く”追求していくことで、自分のワインの世界を形成していくことを勧められています。

 

 実は休肝日にこの本を読んでしまって、飲みたくなって困ってしまいました…