ザ・スコアラー/三井康浩

 

 

 長らく読売ジャイアンツでスコアラーを務められ、原監督の下でのWBCでもスコアラーを務められて、WBC2連覇を支えた方がスコアラーの仕事について語られた本です。

 

 元々著者の三井さんはジャイアンツの選手だったということなのですが、病気もあって短期間での引退を余儀なくされたのですが、当時としては珍しくそのまま球団にスコアラーとして残られたということです。

 

 この本の目的として、余程のマニアを除けば、その仕事ぶりをあまり認識されていないスコアラーの仕事がどんなものなのかと言うことを紹介することを挙げられているのですが、その仕事の観点を見ていると野球そのものの鑑賞力も上がりそうな内容となっています。

 

 スコアラーと言うと、目の前の試合のスコアをつけることなのは分かりますが、それだけで終わるワケではなく、そこからそれ以降の試合の対策に活かすという重要な役割があり、例えば投手の配球の傾向とかが解れば、狙い球がおぼろげにわかってくるということもあるというところまでは何となくイメージできるのですが、三井さんが紹介するスコアラーの役割はそれを遥かに超えたところにありました。

 

 バッターであれば打席に入る前の動作とか、ピッチャーであればグローブの向きだとか、そういうところのクセまでを捉えて、狙い球や次に投げてくる球種を予測するなど、かなり細かいところまで見て、対策を立てていることにオドロキマスが、さらに三井さんはベンチに入って、その場で選手に都度都度のアドバイスをするように求められているのですが、スコアラーがベンチに入るのはプロ野球で三井さんが初めてだったそうです。

 

 そんな中で、あの「10.8」での中日・今中投手の攻略や、WBSで日本キラーと恐れられた韓国代表の金投手の攻略、決勝戦でのイチロー選手の優勝を決めるサヨナラヒットまで呼び込んだということで、直接勝敗にまでコミットするような役割をされていたようです。

 

 ITの導入が進んでいる中でスコアラーの役割も変わってくるんでしょうけど、なんともエキサイティングなモノだったんですね!?