校則なくした中学校 たったひとつの校長ルール/西郷孝彦

 

 

 先日紹介した雨宮処凛さんの『学校、行かなきゃいけないの?』で取り上げられていて非常に印象的だった世田谷区立桜丘中学校の校長先生の著書を早速手に取ってみました。

 

 『学校、行かなきゃいけないの?』でも触れられていたように、学校での高圧的な管理が不登校の引き金になることが多々あるということで、西郷さんが赴任した当初の桜丘中学校でも先生が生徒に怒鳴り散らして、ギスギスしたところがあったそうです。

 

 そこからどうすれば「生徒が3年間幸せに過ごせるか」ということにフォーカスして、個々の校則も合理性があるのかということを突き詰めていった結果、生徒の幸せに資する校則が無かったということで、結局校則がなくなってしまったようです。

 

 その結果、不登校だった生徒も、教室には入れないけど廊下や校長室でもいいよ、とハードルを下げることにより徐々に学校に来れるようになり、最終的にはフツーに教室で授業を受けることができるようになった生徒が多くいるということです。

 

 さらには、先生の方も校則違反を細々と注意しなくてよくなったということで、ストレスが軽減して、生徒との関係も良好になったという効果もあったようです。

 

 そういう風にすると収拾がつかなくなるんじゃないかとか、社会性が身につかないんじゃないかと訝しむ向きがあると思いますし、西郷先生自身もそういう危惧はお持ちだったようですが、生徒の方もそれだけの信頼をされると、それなりに応えてくれるということで、強制されることなく自律的に秩序を保つようになったそうです。

 

 ただ、暴力や盗みなどの犯罪については毅然と対応しているそうで、どうしても内部の不祥事を隠蔽しがちな一般的な学校とは真逆で、躊躇なく警察を呼ぶということで、最低限の社会性は強制力を働かせるべきだと考えておられたようです。

 

 そういう評判が不登校に悩む生徒や親御さんを呼んで、多くの生徒さんが越境してワラにもすがるキモチで桜丘中学校に来られたということですが、多くの元不登校の生徒さんたちがリッパに卒業して行かれたということです。

 

 先生方にとっては、どうしても目先の「管理」で秩序を保とうとする誘惑が働くとは思いますが、こういったカタチで生徒さんたちの「個」を尊重するカタチで強制されずに調和して行くような風潮が少しでも広がっていけばいいんですけどねぇ…