なぜ「大学は出ておきなさい」と言われるのか/浦坂純子

 

 

 雇用や労働に関する研究を専門にされている方が、おそらく大学進学を視野に入れる年代の人たちに向けて書かれた大学で学ぶ意義を語られた本です。

 

 この本が出版されたのが2009年ということで、一世代後の現在では大学進学の意味合いも相当変わってしまったこともあって、ここで書かれている内容で最早有効性が薄れてしまっていることもありますが、人生と働くことと関連付けて学ぶことを語るというのは一定の普遍性があるんじゃないかと思えます。

 

 ただ、この方かなり論旨がとっ散らかっていて、せっかく上質なテーマで語られているにも関わらず、構成が希薄なので結果として何を言いたいのかよく分からなくなってしまっていますし、著者自身がバブル期に大学生だったこともあって、卒業証書を得るために大学に行く(ワタクシも同年代なんで、そういう側面があったことが否めないのはよくわかるのですが…)というミもフタもないことをおっしゃられていて、せっかくのテーマ設定が台無しに見えてしまいます。

 

 かつ企業が求める「働く」ことに向けた「学び」が企業側が求めているリテラシー的なモノに終始していて、これを読んで大学を志す年代の人が失望してしまわないか、ちょっと気になってしまいます。

 

 せっかくなら、「人生」の部分も絡めてもうちょっと高尚なトピックを聞きたかった気がします。