はじめての日本神話/坂本勝

 

 

 高校生~大学生向けだと思われる新書シリーズの中の1冊で日本の神話についての本があったので手に取ってみました。

 

 サブタイトルにあるように『古事記』が題材になっているのですが、最近ハマっている宗教関係の一連の本を読むまでは『古事記』が「神話」だという認識は希薄でしたし、ましてやそれが宗教的な性格があるとは思ってもみなかったのですが、確かに『古事記』にはイザナギイザナミ天照大神が出てきてたなぁ…ということで、やっぱり「神話」なんだとナットクした次第ですが、「神話」というとキリスト教ユダヤ教の方を思い浮かべがちですが、なぜそういう風に感じていたかと言うのはこの本を読んでいて何となくわかった気がしました。

 

 というのも、『古事記』や『日本書紀』で取り上げられている「神話」というのは、特に『古事記』では地方の伝承みたいなモノが、かなりオリジナルに近いカタチで取り上げられていて、それだけにのちの天皇家の神聖性みたいなモノを考えると、大丈夫かと思うほど下世話な表現もあって、「神話」というよりもイメージ的には「民間伝承」といった方がいいような感じです。

 

 『日本書紀』になると、あくまでもその当時の日本の正史として位置付けるために編纂されたこともあって、『古事記』ではそのまま取り上げられていたオカルティックな色彩は多少は薄められているとのことですが、大きなストーリーはあまり変わりがないということで、イザナギが、亡くなったイザナミを追って黄泉の国に訪れて、腐敗した妻を見てショックを受ける描写はそのままで、二人の子である天照大神を始祖とする天皇家の源流に、そういう穢れみたいなイメージを背負わせるのはかなり意外でした。

 

 そういう下世話な部分も日本人が天皇家に親しみを覚える素地ともいえる気がしますし、日本人としては、世界最古の王家としてのオリジナルはやっぱり抑えておかないといけなかったですかね…