坊主失格/小池龍之介

 

 

 仏教の教えをベースにした数々の自己啓発書で知られる小池さんの自伝的な著書です。

 

 「坊主失格」というなかなか衝撃的なタイトルなのですが、冒頭で「こんなサイテーな人間でも多少は変われるのなら、自分も今からでも変われるかもね」と書かれていて、ご自身の体験を通して仏教の救済について語られています。

 

 小池さんは幼少の頃から、かなり自分に愛情を向けられることを強く求める性癖があったようで、それが成長していく過程でも続き、さらにかなり屈折したカタチで表れていたということで、おそらく昨今であれば何らかの精神的な障害と診断されるであろう、なかなか壮絶な状況だったようで、周囲も、ご自身をも深く傷つけていたようです。

 

 結婚~離婚を経たことで、何か根本的に自分を変えなければと思われた小池さんは、僧侶であるお父様に瞑想を勧められて取組んでいるウチに光明を見出したということです。

 

 そんな中で、”悟った”時のことを紹介されているのですが、迷走をされているウチに、自分が傷つけてきた人たちのことが走馬灯のように次から次へと現れた後に、何か憑き物が落ちたような感覚になったということです。

 

 そしてよく知られる「小池龍之介」になられたということなのですが、「こんな私でも」というところが、どこか悪人正機説を思わせるところもあり、仏教の効用の側面が顕著に表れているような気がしました。