人生の役に立つ聖書の名言/佐藤優

 

 

 敬虔なクリスチャンとしても知られる”知の怪人”佐藤優さんが選んだ聖書の名言に、佐藤さんの解説がつけられたものとなっています。

 

 個人的には、聖書の名言の教えや教訓を学ぶというよりも、宗教の原典としての聖書にどんなことが書かれてあって、どういう意味合いがあるのだろうかということに興味があって手に取ってみました。

 

 元々、キリスト教ユダヤ教の教えがベースになっていて、ユダヤ教自体がどちらかというと選民思想的な色彩があって、特に下層に属する人たちは信者としてターゲットとなっていなかったようなのですが、キリスト教はそういう人たちも差別なく教えを説いたというところが、世界宗教たる原典と言えるのかも知れません。

 

 イエス・キリストとしては預言者として、どこまでユダヤ教という意識があったのかは分かりませんが、神の意志にできるだけ忠実であろうとしたということで、既存のユダヤ教の権威からすると相当うっとうしい存在だったということで、結局刑死した後に復活するということなのですが、そういう結末を織り込んだ上での布教活動だったということもあり、その思想というのは、おそらく当時はかなりラディカルだったんじゃないかと思えます。

 

 敬虔なキリスト教徒というのは、神の意志に忠実にしていれば、その行動が原因で死んだとしても復活すると信じているので、死を恐れないということで、そういう宗教的な体験のないワタクシからするとその意志の強さは想像の外にあるのですが、2013年に日本人がISに殺害された事件を引き合いに出されていて、共に殺害されることになる後藤健二さんは湯川さんが拉致されたニュースに接した時に、そういう啓示を受けて救出に向かったのではないかと指摘されているのが印象的です。

 

 まあ、そういう尖鋭的なことだけではなくて、あまりキリスト教の教義に通じていないワタクシでも知っていたような名言もアリ、一般的なイメージの慈愛に満ちたキリスト教の教えも含まれているのですが、ちょっとそういうラディカルな側面が意外だったので、偏った紹介になってしまいましたが、そういう尖鋭的な部分って、イスラム教や仏教にも見られるようで、宗教の拡大という意味ではどこか尖った要素が必要なのかな、という気もしました。