プロ野球の“常識”を疑え!/里崎智也

 

 

 第一回WBC日本代表の正捕手として制覇に貢献したことや、2010年にパリーグの3位から日本シリーズを制覇した「史上最大の下剋上」の立役者にして、そのコトバの生みの親としても知られる里崎智也さんによる野球論です。

 

 「“常識”を疑え!」とありますが、野球というと、未だかなり権威主義的な風潮があるということで、いわゆる大御所が大昔の成功譚を押し付け続けていたりすることが多々あるようで、里崎さん自身、そんな“常識”のすべてを「疑え!」と言っているワケではない、と冒頭でおっしゃっていますが、かなりアヤシげな成功譚を疑いもなく受け入れることには否定的な見解を持たれているようです。

 

 里崎さん自身は、一番影響を受けた指導者として千葉ロッテマリーンズで指導を受けたボビー・バレンタインさんを挙げておられて、その自由闊達な指導スタイルに感銘を受けたことを明かされています。

 

 権威主義的な指導を避けて、各選手が持てる能力を遺憾なく発揮できることを最優先にしたスタイルだったようなのですが、そういうスタイルがそれまでの日本のプロ野球かいに一石を投じたところがあり、未だにその業績が評価されているようですが、それって、かなり日米の社会の差を反映しているような気がしますし、未だにそういう個性を重視するスタイルが主流にならないところは、野球界も日本社会も共通しているような気がします。

 

 正直、ワタクシ自身本格的な野球の競技経験が無いので、里崎さんがこの本の中で例示されている個々の“常識”の疑わしさがホントにどれくらい疑わしいものかを評価する素養はありませんが、里崎さんの説明の明晰さに思わずナットクさせられてしまうところがあります。

 

 最後の章で里崎さんの将来の夢として、球団社長を挙げられていて、理想とするチームの姿を紹介されていますが、そういう個性を重視したスタイルで勝ちまくって、日本社会を変えるくらいのインパクトを及ぼしてくれる日が来ればいいのになぁ…と切に願います。