新型格差社会/山田昌弘

 

 

 ”婚活”というコトバを産み出したことでも知られる家族社会学者の山田先生の近刊ですが、この本は先日紹介した『希望格差社会』の10数年を経ての続編の位置付けられるモノのようです。

 

 バブル崩壊まで世界史上稀に見るほどの均質化した社会を形成していた日本ですが、バブル崩壊後、小泉内閣の規制改革を経て競争社会に入り、徐々に格差が拡大していきつつある状況を紹介したのが前著であったのに対し、この本は完全に格差が固定化されてしまって、一旦下層に陥ってしまうと、なかなかそこから抜け出せない状態になってしまった状態を紹介されています。

 

 しかもコロナ禍によって、下層に属していた人たちはより今給黎の度合いを深めており、上層に属している人たちは、それほど生活水準は変わらないか、もしくはより豊かになる層もあるようで、よりその格差の拡大傾向に拍車をかけるカタチになっているようです。

 

 個々の格差の内容というのは、この本の中で「教育」「仕事」「地域」「消費」とカテゴライズして紹介されていて、その内容はある程度想像の範囲だったのですが、特に「おわりに」で山田先生のお考えがコンパクトにまとまっているのですが、この格差の拡大というのが、オビにあるように「人災」であるという色彩が強いというのが結構ショッキングでした。

 

 というのも、平成時代における政府の施策が「格差は広がっていくのだけれども、それを認めることができなかった」というスタンスが、より格差を拡大させてしまったということなのですが、そういうスタンスは戦後的なおとーさんが家計の収入の大半を稼いで、おかーさんは専業主婦でという家庭像が、最早形骸化しつつあるにも関わらず、そういうモデルを前提にセーフティネットを想定していた政府の失敗に起因するところが大だと指摘されているのですが、いちいちナットクさせられて、政府の無策にムカついてきます。

 

 ということで、抜本的にセーフティネットの設定の見直しが、格差の縮小にとって不可欠なのですが、目下最大の課題であるコロナ禍の克服すら覚束ない状況で、こういう部分に手が付くのはいつになるのでしょう…