天皇陛下の私生活/米窪明美

 

 

 終戦の年の元旦から大晦日までの昭和天皇の私生活を追った内容の本です。

 

 「私生活」といっても激動の年だっただけに、どうしても歴史上重要なイベントが目白押しで、プライベートな部分のトピックはどうしても印象が薄くなりがちで、東京空襲時には度々皇居にも焼夷弾が落とされて昭和天皇が生活されていた建物が焼け落ちたり、半藤一利さんの『日本のいちばん長い日』で紹介されていた終戦前後のクーデター計画とのせめぎ合いなど、かなり緊迫した様子が紹介されており、

 

 それでも、緊迫した状況で張り詰めた状況に置かれた昭和天皇を、朗らかな皇后陛下が和ませていた様子や、疎開中の現上皇陛下との手紙でのやり取りで寂しさを吐露されている様子など、市井の人々と変わらない戦時中の生活を紹介されています。

 

 印象的だったのが、現在の皇室でも王家とは思えないほどの質素な生活で知られますが、当時もヤミ市からの食糧の調達を拒否して、相当粗末な食生活を強いられていたことを紹介されているのと、普段生活されていた部屋が、かなりこじんまりとしたものを好まれていたということで、天皇家のつつましやかな伝統を彷彿とさせられます。

 

 ただやはり日本が現在のような姿になれたのは、占領下における皇室のGHQとの「外交」が果たした役割が相当大きかったということを改めて思い起こさせるところもあり、その功績の偉大さはもっと強調されてもいいんじゃないかと、改めて思い起こさせられました。