見抜く力/佐藤優

 

 

 ”知の怪人”佐藤優さんの『President』での連載をまとめた本なのですが、最近佐藤さんが力を入れられている”エリートの育成”を中心とした内容となっています。

 

 佐藤さんが作家デビューされた頃は、インテリジェンス・オフィサーとしての経験を元に、結構ウラの世界を感じさせる作品も少なからず見受けられて、そういう趣向も佐藤さんの魅力のひとつだったのですが、最近エリート育成に注力されている中で、マルクス経済学や聖書を元にした教養の充実といった感じの高尚なモノが多くなって、ブラックな面が影を潜めていたのが残念だったのですが、この本では真のエリートにはやはりブラックな面をも乗り越えていかなければいけないということで、そういう部分にも触れられているトピックも盛り込まれています。

 

 周囲に陥れられないために気を付けておくべきことというのは、やはりソ連~ロシアで修羅場をくぐってきただけの迫力があり、ここまで周到に気を配らなければいけないのかと思うと、とてもじゃないけどそういう境遇にはなれないなぁと感じます。

 

 また、リーダーとしてのマネジメント論でも、「部下の”嫉妬”をマネジメント」しろ、という言われてみれば確かにそうなのですが、なかなかマネジメント論で取り上げられることの少ないトピックでありながら、それで足元を掬われる人が多々いるであろうモノなので、傾聴に値するところです。

 

 最古のパートはやはり教育論なのですが、どうしても現在の日本の高等教育では、あきらかにグローバルなシーンで活躍して行く人々に比べるとかなり劣っているということで、そのギャップの部分を意識的に埋めて行かないと、なかなかキビシいようです。

 

 ここのところ、佐藤さんと出口さんの教育論についての本が続いていますが、お二方とも日本の教育の拙劣な状況を詳らかにされていて、そういう部分が早急に改善されないと、どんどん日本は沈没して行くようで恐ろしく感じます。