読書を仕事につなげる技術/山口周

 

 

 2017年に出版された『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』でエリートたちが積極的にビジネスにアートの「美意識」を取り入れていることを紹介して大きな話題になった山口さんが同時期に出版された”読書論”です。

 

 元々山口さんは大学時代に哲学、大学院時代に美術史を専攻されたということで、ビジネスに関しては専門的な教育をうけなかったにも関わらずコンサルティングファームにスカウトされて、短期間で読書によりビジネスに関する知識を身に付けた経験を元に編み出した読書法がこの本のベースになっているということです。

 

 その時の読書ではかなりムダが多かったということで、大きく分けてビジネス書と共用に関する本の読書と分けて考えられているようで、ビジネス書についてはその時のビジネス上の必要に応じて、各章の冒頭の数行を読むなど、かなりザッピング的な読み方を勧められていて、しかもドラッカーやポーターといったいわゆる古典を中心に読むことをススメらえているのが印象的です。

 

 それよりもどちらかというと、この本ではビジネス上でいつか活きてくるはずの教養を身に付けるための読書がメインといえそうで、その中でも、「哲学」「歴史」「心理学」「医学・生理学・脳科学」「工学」「生物学」「文化人類学」の7分野を中心に読むことを勧められています。

 

 こちらも、山口さん自身が、面白いと思ったものしか、結局はその知識を血肉化することはできないとのお考えから、ザッと読んで興味をそそられたところがある本を選んで、自身が「ここには何かがある」という感覚を重視するということを強調されていて、このあたりが感覚を重んじる山口さんらしいなぁ、と思います。

 

 その上で、そういう読書から得た教訓をEvernoteなどに書き留めて、いつかどこかの機会に活かすための自身の情報の「イケス」としてためておくことを勧められています。

 

 こういう感覚を重視した読書法というのはあまり見た経験がないのですが、『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』でもビジネスでの「感覚」の重要性を強調されていたように、こういう方法で「感覚」を研ぎ澄ますことが、かなりの”武器”になって行くような気がします。