不条理を生きるチカラ/佐藤優、香山リカ

 

 

 ”知の怪人”佐藤優さんが精神科医香山リカさんと対談された本なのですが、テーマが「不条理」に纏わる思想についてのことらしく、思想家としての香山さんとの対談ということです。

 

 サブタイトルの「コロナ禍」云々は脱稿後のコロナ蔓延に伴う「不条理」の拡大を受けて序章に後付けされたということで、ここまでの扱いをするのはかなり勇み足ではないかと…

 

 佐藤さんは外交的手腕はそれなりに評価しつつも、その反知性的なアプローチを厳しくしている安倍氏についてこの本でも触れられているのですが、小泉政権に始まって安倍政権に向けて拡大の一途をたどり、コロナ禍でトドメを刺した「不条理」の拡大についての思想的な背景をポストモダン的なモノに求められており、浅田彰氏などから始まった、割と非論理的な思想と、そこから湧いてきた思想家というか、ワイドショーのコメンテーター的な思想家たちをブッたぎります。

 

 小林よしのり氏の”転向”を独りよがりと批判したり、三浦瑠璃氏の論理の不整合を検証したりと、香山氏の攻撃的な姿勢に影響を受けてか、この本の佐藤さんは割と容赦なくこの手の思想家の論理の破たんを理詰めで糾弾しているのですが、”知の怪人”佐藤優さんにこれをやられた相手はタマったモンじゃないでしょうねぇ…

 

 結論として、こういう「不条理」な思想を克服するのはナショナリズムなんじゃないかとおっしゃられているのですが、個人的にはそのつながりがイマイチ結びつきませんでした…

 

 内容に深く突っ込もうとするとかなり難解なのですが、お二方が結構トバしているので、それはそれで楽しく読める本です。