言い訳/塙宣之

 

 

 ご自身も2008年に決勝進出を果たし、2018年からは審査員を務められているナイツの塙さんが、M-1グランプリについて語られた本です。

 

 ワタクシ自身そんなに積極的にお笑いを見ているワケではないのですが、2020年のM-1でマジカルラブリーが型破りの芸風で、あれは漫才なのか!?という議論を巻き起こしたことなどを多少の興味を持ってみていたりするのですが、そういうM-1グランプリの裏側を出演する芸人の目線から語られているのが興味深い所です。

 

 サブタイトルに『関東芸人はなぜM-1で勝てないのか』あるように、歴代の優勝者の大半が関西出身者なのですが、その「言い訳」として、まず大阪は”漫才界のブラジル”という言い方をされていて、ボケとツッコミが日常生活に根付いているということで、シロウトがフツーの会話の中でボケとツッコミを織り交ぜながら会話をしているといった環境から選り抜かれてきた芸人たちというベースの盤石さを指摘されています。

 

 また、M-1自体が吉本興業が主宰されているということもあって、関西で練り上げられてきた漫才のスタイルが高く評価される傾向が強いということもあるようで、割と自虐ネタが散見される関東芸人のスタイルを受け入れない審査員も少なからずいるようで、関東芸人にとってM-1は「道場破り」的な側面もあるようです。

 

 そんな中で、この本が出た翌年に優勝するマジカルラブリーについて、2019年のM-1において酷評されたことに触れられていますが、かなりその辺りも評価する側の「漫才」のあり方についての逡巡というのも大きな背景としてあるようです。

 

 まあさすがに、こういう芸人さんたちがパッと出てオモシロいことを言って…みたいな単純なモノではないだろうな、とは思っていましたが、ここまでロジカルに緻密な計算の下に取組まれている人たちの多さにはかなりオドロキでしたし、やはり芸人というのはタダモノではないなぁという感を強くした次第です。