日本型組織の病を考える/村木厚子

 

 

 障害者団体向けの郵便料金の割引制度の不正利用事件で逮捕され、検察が証拠を捏造して冤罪の危機の中無罪を勝ち取り、その後厚労省事務次官まで登り詰められた村木さんが、冤罪事件における拘留や裁判の経験やご自身のキャリアを通した経験を踏まえて、日本型組織の問題を語られた本です。

 

 日本における会社や役所、種々の団体などは押しなべて凝集圧力が強く、いわゆる「忖度」のようなことが求められることが多いのは周知の通りなのですが、ここ数年の中央官庁における一連の不祥事に見られるように、過度に自己保存的な意識が働くことで、本来の説明責任論が蔑ろにされ続けたという側面があるようです。

 

 村木さんの逮捕などはその最たる現象といえるようで、何とか目立つヤツを挙げるといった、本来公正を求める検察とは真逆の方向に行ってしまったワケですが、組織としての”成果”を歪んだ方向で求めてしまったというように分析をされています。

 

 日本の組織ではそういう風に長年の慣行で形成されてきた”伝統”が重視される傾向が強く、合意形成は遅いんだけれども、慣行として形成されたモノについては覆すことが極めて難しいようで、そういう”失敗”について多くの研究が知られていますが、なかなかそういう性癖を正すことは難しいようです。

 

 村木さんはそういう風潮に対して、欧米で言われているという「コンプライ・オア・エクスプレイン」ということを紹介されていて、原則として官公庁が扱う情報については公開するという原則に従い、例外的に非公開とする場合はその意義を国民に向かって説明するということで、透明性を高めていこうというモノだそうです。

 

 とは言っても、政治からして透明性とは遥かに遠い所にあって、官僚ともズブズブの状況にある中で、こういった軌道修正のための法整備が進んでいくのか、甚だギモンではあるのですが…