働かないアリに意義がある/長谷川英祐

 

 

 コチラの本、”知の怪人”佐藤優さんを始めとして、多くの日本を代表する知性が推薦図書として挙げられているということで手に取って見ました。

 

 著者の長谷川さんは進化生物学という分野を専門とされているのですが、哺乳類だけではなく、アリやハチなどの昆虫の生態というのが、長きに渡りその種を維持していくために最適化して行ったという側面もあり、人間の生存ひいては、組織の生存といったところにも役立つ教訓を得られるのではないかということを示唆されています。

 

 タイトルにある「働かないアリ」についてのことですが、アリというと「アリとキリギリス」ではないですが、勤勉なイメージがありますが、いわゆる「働きアリ」の中でも実際に定常的に働いているアリはごく一部だということで、大半は「働かないアリ」なんだということです。

 

 なぜ、そういうことになっているかというと、何らかの突発的な事象が発生した時のためだということで、普段ぐうたらしているアリもそういう時にはちゃんと働くということで、そういう例外的な事象への対応ができることが種の保存に大きな意味があるということです。

 

 昨今、グローバリズムの広がりもあって、効率が過度に強調される傾向が強い日本企業ですが、そういう姿勢が実は会社の存亡の危機を招くことも想定されるということを指摘されています。

 

 どうやらこの本自体、民主党政権時の”仕分け”が話題になった時期に執筆されたようで、短視眼的に言うとこの本の対象となっているような研究は、効率から言うと真っ先に淘汰されてしまうようなものですが、人類の種の保存という意味では重要な役割を果たす可能性も高いとあとがきで触れられており、「効率」って何なんだろう、とちょっと考えさせられてしまいました…