日本と世界を知るためのファクト図鑑/佐藤優監修

 

  “知の怪人”佐藤優さんが監修をされた、多くの日本人にありがちな思い込みを、ファクトを以って正そうという主旨の”図鑑”です。

 

 「日本」「隣国」「世界」という3つのカテゴリーで合わせて105もの、ありがちな思い込みを統計などの数字を駆使して正そうということなのですが、特に「日本」のカテゴリーで、例えば待機児童に関するテーマで「出生率は下がっているので受け入れ不足になるほうがむしろ稀である」といったような、こんな思い込みをすることは無いでしょう!?と思うような、ファクトの提示ありきのムリヤリな「思い込み」設定が散見されるので、これホントに佐藤さんが監修をされてるの!?と、かなり多くのクエスチョンマークが飛びまくったのですが、さすがに佐藤さんの専門領域の「隣国」や「世界」についての「思い込み」については、うならされるテーマ設定とファクトが多くなります。

 

 特に多くの日本人…とりわけアジアでの日本の優位性を信じたい人たちにとって、韓国や中国について取り上げられている「思い込み」をファクトで否定されるのは不本意に思えることが多いのかも知れませんが、”失われた20年”を経て、GDP規模で抜かれた中国はモチロン、一人当たりGDPで肉薄されている韓国と比較しても、最早明確な優位性を示せるデータは見られないということで、そういう力関係の変化に応じた関係性を求められていることを認識する必要がありそうです。

 

 また、アフリカを中心とした途上国の生活環境の底上げで、かなり平均化が進んでいることが指摘されており、地球規模の発展を志す意味でも、これらの国々のさらなる発展が必須であり、日本も含めた先進諸国のサポートが、まわりまわって自分たちのためにもメリットがあるようです。

 

 さらには、どうしても欧米陣営に属する日本から見ると、ネガティブな視点で捉えがちなイスラム諸国についても、ある程度プレーンな視点で見て、必要な部分では手を携えることの重要性を指摘されていて、ファクトに基づいた判断の必要性を強調されています。

 

 まあ、一部ムチャなテーマ設定もありますが、概ね目からウロコなテーマが多いので、通読しようとするとちょっとホネですが、ペラペラ興味のあるテーマから見て見ると面白い本です。