ことばと思考/今井むつみ

 

 

 『英語独習法』が静かなヒットを続けている今井さんの著書ですが、英語関連の著作が話題にはなっているものの、どちらかというと今井さんのメインの研究フィールドは語学というよりも言語学のようなので、この本はよりメインの研究フィールドに近い部分での著作のようです。

 

 この本のテーマは、人間の思考に言語がどのような役割や影響を及ぼすかということのようで、思考というとフツーは言語ありきのように思ってしまいますが、必ずしもそうではないようです。

 

 ただ、言語自体は人間の思考に大きな影響を及ぼしているのは間違いないようで、その相互作用について紹介されています。

 

 例えば人間が目の前のことを認識するのに、言語を媒介していることが多いということで、様々な言語における色の概念を紹介されていて、それぞれの言語がもつ色の定義に、人々の認識が引きずられている側面もあるようです。

 

 ただ、ある言語ではわずか2種類しか色を定義するコトバがないにも関わらず、コトバとしては無いはずの色の区別をちゃんとしているというフィールドスタディの結果もあるようで、コトバが無い部分での認識はかなり柔軟である側面もあるようです。

 

 さらには、言語間のコトバの定義内容の差異に基づく認識の差ということにも言及されていて、語学を習得するにあたって、自国語と学ぼうとする言語の意味合いの差をニュアンスレベルで理解しておくことの重要性を指摘されておられて、単純な翻訳が言語の認識のカベとなり得ることを示唆されています。

 

 そういう言語と思考の関係をなんとなくアタマに置いておくことって、意外と語学の修得に役に立つんじゃないかという気にさせられました。