小説家という職業/森博嗣

 

 

 人気小説家の森博嗣さんがご自身の経験を踏まえて、小説家として活動し続けるための秘訣を語られた本です。

 

 ワタクシ自身、小説家になろうとも、なれるとも1ミリも考えたことがないので、単純に森さんの自己啓発的な本だからということで手に取ってみたのですが、世の中には小説家が語る小説家のなり方みたいな本が多々あるようで、そういえば村上春樹さんの『職業としての小説家』もそういう側面での記述もあったような…

 

 ただ、森さん自身そういうノウハウ本的なモノで小説家になるのに役立つとは全く思われていないようで、むしろそういう既存の小説のマネをしないことが小説家でありつづけることのひとつの秘訣だとすら思われているように伺えます。

 

 森さん自身は、ほとんど小説を読まなかったということで、多くの小説家を志す人たちが、あまりに他人の本を読み過ぎていることが、小説家になれない原因だとすらおっしゃっておられて、無意識のうちに読んだ小説を模倣してしまうことが、小説家であることの妨げになりかねないことを指摘されています。

 

 また、多くの小説家志望者が、自身の小説を出版することがゴールだと思ってしまっていることが、職業として小説家であり続けることの妨げになっていることを指摘しておられて、ある程度の冊数を出版できるようになるまでのマイルストーンを展望として持っておかなけらばならないことを強調されています。

 

 森さんは小説家であることにビジネス的な観点が必要だとおっしゃられているようで、多くの小説家志望者ひいては、出版に携わる人たちの多くにそういう観点が決定的に書けているところに出版業界の退潮があるのではないかと指摘しているようにすら思えてきます。