真説 日本左翼史 戦後左派の源流 1945-1960/池上彰、佐藤優

 

 

 ”知の怪人”佐藤優さんが池上さんと共に、日本の戦後の左翼史を語られた本です。

 

 最近、佐藤さんは頻繁に『資本論』にまつわる著書を出版するなど、共産主義を振り返ることの意義を強調されてこられましたが、それは佐藤さんの個人的なお考えというよりも、そういう風潮が出てきているということで、『資本論』を中心としたマルクス経済学に関する著作が静かなヒットとなってきているようです。

 

 その意義については、お二方はグローバル経済の進展による自由と平等のせめぎあいの中で、「自由」が過度に強調されてしまい、人々の格差がかつてないほど広がってしまい、その是正の考え方を模索するという意味で、マルクス経済学の考え方が求められているという側面があるようです。

 

 そういう潮流の中で、日本における「左翼」の活動を振り返ろうということなのですが、戦前に政治犯として拘留されていた主要な活動家たちが、敗戦により解放され、活動を再開するところから始まります。

 

 日本における左翼的な政党というと、日本共産党日本社会党が主要な政党として挙げられますが、前者が今なお暴力革命を可能性として残していることもあって、戦後も大きく党勢を縮小した時期があったようですが、後者は現実的な路線、かつ平和主義的な側面を強調したこともあって、一時は首班指名を受けるなど、日本の戦後政界における主要キャストとしての活躍を紹介されています。

 

 この本は、1960年までの内容で終わっていることでわかるように、今後続巻があるようで、理論的な背景や、今後の格差の是正につながる内容にもツッコんで行くことを予告されているので楽しみです。