読書の技法/佐藤優

 

 

 ”知の怪人”佐藤優さんが、ご自身が駆使されている「知の技法」について、その「入口」とも言える「読書の技法」を中心に紹介された本です。

 

 佐藤さんは平均すると月300冊、多い月だと5,600冊もの本を読まれているということなのですが、モチロン1ページ1ページ読んでいたらそれだけの寮をこなせるはずもなく、熟読と速読を駆使しておられるということですが、元々外務省職員として在外公館におられる時に、膨大な情報からホントに必要となる情報を見出す必要に迫られたことから、この本で紹介されるような技法を見出したということです。

 

 よく速読というと、手っ取り早く情報を取得する手段だとして紹介されていますが、確かにある一面当たってはいるのですが、佐藤さんによるとその分野についてある程度以上の素養が無いと、その本から有用な情報を抽出するのは難しいようで、一定以上に対象の分野についての素養を身に付けるためには、やはりまず熟読が必要になるとおっしゃられているのが印象的です。

 

 特に多くの人が、自分の基本的な素養について不安を抱いていると思いますが、万遍無くベースとなる教養を身に付けるための素養として、再三著書で強調されているように高校の教科書に書かれているレベルの内容をマスターすることをこの本でもおっしゃられていて、日本史、世界史、政治・経済といった社会科学から、すべての科目のベースとなる読解力を養う意味での国語、そして多くの元文系ビジネスパーソンのアキレス腱となっているはずの数学について、かなり詳しく”やり直し学習”の方法論について紹介されています。

 

 佐藤さんが再三「日本語を理解できない日本人が多い」ということをおっしゃっておられまして、その意味がホントの意味では理解できていなかったと思っていたのですが、どうしても人というモノが自分の理解したいように、自分のバックグラウンドに引きずられて、相手の言うことを理解しようとしてしまうのですが、そういう相手のとのバックグラウンドの差異を意識した上で、可能な限りプレーンにコトバを理解しようとするアプローチが紹介されているのが非常に印象的で、如何に自分が浅薄な理解をしていたのかということを痛感させられます。

 

 決して難解な本ばかりが対象となっているワケではないのですが、かなり深遠な世界観というモノがこういう風に形成されるのか、ということがホンのちょっとだけですが垣間見れたような気がしました。