「ドイツ帝国」が世界を破滅させる/エマニュエル・トッド

 

 

 ”知の怪人”佐藤優さんが著書の中で地政学とか世界情勢とか、最近の話をするときに、必ずしも好意的に取り上げているワケではないのですが、結構頻繁に取り上げるので気になっていたのですが、ようやく思い出してエマニュエル・トッドさんの著書を手に取ってみました。

 

 どうやらトッドさん、本職は人口歴史学ということらしいのですが、この学問をベースにしていると、どの国も人口動態を粉飾することはほぼ不可能だということもあって、人口動態をベースに各国の行く末を考えることで、かなり精度の高い予測ができるという側面があるようで、この方のおっしゃることがもてはやされているという側面もあるようです。

 

 この本が出版されたのが2015年で、まだそこまで中国が幅を利かせていなかった頃だということもあって、この方は割と中国の行く末について疑問的な見方をされていたということも相まって、ドイツがアメリカに逆らい始めるかも…みたいなことが大きなテーマとなっています。

 

 その他、当時大きな懸案となっていたウクライナ問題を交えて、ロシアやEU各国の動向について話されているのですが、かなりEUのドイツ支配が顕著になってしまっていて、トッドさん自身、この当時中国をあまり重視していないことから、アメリカvsドイツという構図を描かれていたようです。

 

 おそらくトッドさんの見通し以上に中国が台頭し、人権的な問題でEUとアメリカの利害が一致して、ある低同一歩調を取ることになっていますが、メルケル氏も退陣することになり、トッドさんのお見立て通りになる可能性は低くなっているように見えます…

 

 ただ、よく言われるドイツと日本の類似性について言及されている部分で、トッドさんは否定的な見方をされており、ドイツが「帝国」的なモノを志向しているのに対し、日本にその野望は無さそうだというところが決定的な違いだとされており、その部分はどちらかというと日本よりも中国との類似性を指摘されているのが興味深い所でした。

 

 ちょっともう何冊かトッドさんの本を読んでみて、語られることの傾向を見て見たいと思います。