グローバリズム以後/エマニュエル・トッド

 

 

 昨日に引き続きエマニュエル・トッドさんの著書です。

 

 コチラの本は、1998~2016年にかけて、トッドさんが”友”と呼び、公私に渡り親交を深めている朝日新聞の大野博人さんによるインタビューを中心としてまとめられた本です。

 

 1998年からとありますが、多くは2015年前後のインタビューとなっており、グローバリズムの広がりが世界に与えた影響を語られたモノが中心となっています。

 

 グローバリズムの進展によって、世界のマーケットが随分と狭くなり、その中での競争の結果、かなり効率が上がったのは確かなのですが、その競争の結果、どこかギスギスしたものが人々の間に広がってしまい、持てるものと持たないものの分断が進んだだけでなく、却って国家間のつながりもギスギスしたモノとなり、ごくごく一握りの持てる人のみに富が集中し、世界中のほとんどの人々はヘイトのようなモノに耽溺せざるを得ないような状況になってしまったようです。

 

 象徴的なのがEUだということで、ドイツが先頭に立って引っ張らないと成り立たないようになってしまっているにも関わらず、それ以外の国々がドイツに反発するようになっており、トッドさんは最早EUが崩壊した方が、西欧諸国の融和につながるのではないか!?とすらおっしゃっています。

 

 ちょうどアメリカでトランプ氏が大統領だった頃のインタビューが多かったということもあって、アメリカの凋落についても指摘されていますが、従来特権層であったはずの白人中高年層の死亡率が大幅に高くなっているということで、そういう人々の凋落がアメリカの凋落を象徴しているようです。

 

 統合と分断を繰り返すのが歴史だとはいうものの、なかなか今後に対する処方箋が見出せそうにないところに問題の深刻さが表れているようです。