歴史のミカタ/井上章一、磯田道史

 

 

 『京都ぎらい』の井上章一さんが『武士の家計簿』など今や日本史界きっての人気作家である磯田道史さんが「歴史のミカタ」について対談するということだったのですが、このお二方って井上さんが所長を務められている国際日本文化研究センターの上司部下の関係だったんですね!?

 

 この本は本郷和人さんとの対談本である『日本史のミカタ』、佐藤賢一さんとの対談本である『世界史のミカタ』に続く三部作の完結編という位置付けなんだそうですが、井上さん自身建築史の研究者ではあるモノの、どちらかというと意匠の部分の研究がメインで、チャキチャキの歴史家とはいいがたいというものの、磯田さんによると相当歴史に関して博識であるということで、しかもちょっとナナメの視点から歴史を見れるということで、「歴史のミカタ」を語るという意味では格好の人物なんだそうです。

 

 『京都ぎらい 官能篇』など性風俗に関する著書も手掛けられている井上さんとしては、歴史家が政治・経済などマジメなハナシばかり取り上げたがる風潮が気に入らないようで、この本では「人間の営みの結果としての歴史」ということに重点を置いて語られていて、対談相手として書簡などを重視する磯田さんはうってつけと言えそうです。

 

 ということで、いわゆる「正史」とも言えるメインストリームの歴史の裏側というか、そのサイドストーリーとも言える、嫉妬や虚栄心や忖度や性欲などといった人間の感情のうごめく様子を窺うことは、実は歴史のリアルな姿を知るキッカケになるのかも知れませんし、そういう小説を読むように歴史上の人物の人生を読むように歴史を学ぶことで、歴史ぎらいが多いと言われる女性にも響く部分があるんじゃないかと思います。

 

 是非ともこういう本に人気が集まって、ダイナミックな歴史観が普及して欲しいモノです…