池上彰が世界の知性に聞くどうなっている日本経済、世界の危機

 

 

 池上さんが、今を時めく『21世紀の資本』のトマ・ピケティや『帝国以後』のエマニュエル・トッドにインタビューするという、一見豪華なモノなのですが…

 

 元々どちらかというと、Chapter3にあたる戦後日本の高度経済成長を支えてきた人々へのインタビューが中途半端な分量であったのに、流行りのピケティやトッドといった出版当時旬だった人のインタビューを付け加えて1冊の本に仕立て上げたという、かなりビミョーな作りの本のようです。

 

 ということでこの本のメインは戦後日本経済の勃興なのですが、政財官が一丸となって戦後復興から世界に冠たる経済大国に育て上げるまでは良かったのですが、結局そこから先の青写真が欠けていて失速してしまったということのようで、ただそれでもコロナ禍以前のグローバリズムの進展による格差の拡大のアンチテーゼというか、塊となって成長して行ったことが、”一億総中流”という世界市場でも稀にみる均質な国家につながったという側面はあるようで、人を蹴落とすばかりに腐心する”グローバルスタンダード”より、余程血の通った人間らしい社会だったんじゃないかなぁ、と今となっては感じられます。

 

 また景気変動の周期ではないですが、日本の経済は40年周期で勃興を繰り返してきたということで、あと10年弱で上昇期に入るという見方もあり、中国の下降局面とも相まって、何か日本が新しいキッカケを見つけられるんじゃないかという、希望的観測とも思える論説もあります。

 

 ということで、「失われた30年」がどんどん伸びていくという悲観論もさることながら、コロナ禍というドン底にある今、上を見るしかないという戦後のような心持になることこそが希望の光となるのかも知れません。