戦争というもの/半藤一利

 

 

 大著『昭和史』を始めとして、昭和史を追い求めることで戦争の惨禍を訴え続け、今年1月に惜しまれつつ亡くなられた半藤一利さんの生前最後の執筆となった著書です。

 

 コチラの本、編集者をされている半藤さんのお孫さんが編集を手掛けられたということでメディアでも取り上げられていましたが、最期まで一貫した戦争へのスタンスを貫かれています。

 

 内容としては、その頃に発せられた名(迷)言を手掛かりに太平洋戦争の開戦に至る過程から、終戦までを辿るというカタチを取られていて、そのコトバというのが、軍部や政府の迷走だったり、国民の暴走であったりと、様々な立場の人のモノが選ばれているワケですが、ある意味国民の”総意”としてアメリカとの戦争に突っ走って行ったという側面が濃かったことを改めて指摘されており、メディアや国民が作り上げる”空気”の恐ろしさを感じます。

 

 おそらく半藤さんは、コロナ禍において日本社会を取り巻く”空気”について、戦争に突入して行く時期の”空気”と類似したものを感じられたんじゃないかという気がしたのですが、そういう全体主義的な”空気”というモノは、あの戦争の惨禍への反省が全くと言って生きていないんだなぁ、ということを半藤さんも感じられたのかも知れませんし、そういう意味で今一度注意を促しておかなくてはいけないと思われたような気もして、すべての日本人は、この半藤さんの”遺言”を重く受け止める必要がありそうです。