ジョブ型雇用社会とは何か/濱口桂一郎

 

 

 元々、旧労働省で労働政策に携わられていて、労働法の研究者を経て、現在労働政策研究・研修機構労働政策研究所長を務められている方が語られる、日本企業におけるジョブ型雇用適用について語られた本です。

 

 安倍政権時に非正規雇用の問題がクローズアップされた際に、同一労働同一賃金の制度化が議論されたことや、トヨタや日立といった日本を代表する企業のトップが相次いで終身雇用の維持に否定的な発言をしたことから、欧米的な雇用形態への移行の空気が醸成されて行っているようです。

 

 ただ日本ではジョブ型への移行が新しい動きと捉えられていますが、そもそも現在の日本の雇用形態である、人をベースとした雇用…濱口さんは「メンバーシップ型」と命名されていますが…自体が戦後から一般的になったモノだということで、歴史的に見ても、世界的に見てもかなり特異な雇用形態だったということで、スタンダードなカタチへの回帰と捉えられるようです。

 

 そもそも労働法自体も戦前に制定されたモノなので、現在多くの日本の大企業が適用しているメンバーシップ型の雇用実態に即した解釈で適用されているということで、条文だけ見ても、規制の実態がつかめないという特異な状況になっているそうです。

 

 それでも日本の高度経済成長を支えた仕組みということで、今や制度疲労感ハンパないとはいうモノの、ほとんどの日本の大企業はメンバーシップ型にドップリ浸かってしまっていて、ジョブ型への移行のハードルはハンパなく高いようです。

 

 ジョブ型への移行の動きが具体化し始めた頃に経団連の会長を務められていた中西氏の出身元だった日立製作所がいち早くジョブ型の導入を宣言されたことを高く評価されているようですが、実際のメンバーシップ型に基づく雇用管理は採用をするところから定年退職~雇用延長に至るまで、かなり雁字搦めの制度となっているようで、文字通りのジョブ型を適用しようと思ったら、人事管理の制度を根底から見直さなくてはいけない状況にあるということで、漏れ聞こえてくる「ジョブ型」での制度設計は、言ってみれば”骨抜き”みたいなモノになってしまいそうであることを危惧されているようです。

 

 個人的にはあと10数年逃げきれれば…という感じですが、おそらくあと10年したらそういうカタチになっているんでしょうねぇ…