話すための英語力/鳥飼玖美子

 

 

 NHKラジオの英語講座など長きに渡り英語教育に多大なる貢献をしてこられた伝説の同時通訳者鳥飼玖美子さんがスピーキングにフォーカスして英語力を語られた本です。

 

 この本は『本物の英語力』『国際共通語としての英語』を受けての三部作の完結編とも言える位置づけだということで、多くの日本人が身に付けることを切望してやまない「話すための英語力」について語られたものなのですが、全2作ほど体系的な内容ではなく、思う所を書き留めた散文的な印象を受ける内容なのですが、それだけに鳥飼さんのホンネが散見されるモノなんじゃないかと思える内容になっています。

 

 長らく通訳者として活躍されてきただけに、鳥飼さんは「話すための英語」のプロ中のプロであるワケですが、ご本人はどこか「話すための英語」のプロは書き言葉としての英語のプロよりも軽く見られているんじゃないか、ということに触れられています。

 

 だからといって難易度が低いのかといえば、全くそんなことは無くて、むしろ瞬発的に様々な要素を過不足なく満たした上で話さなければ、ヘタをすると誤解を招いて、モノによれば外交問題にかかわる可能性のあるような場面にも関わられてこられたということで、かなりイタイ想いも、シビレる想いもされてきたようです。

 

 それも教科書的に、こういうことに気を付けておくことと言い切れることばかりではないようで、こういうシチュエーションだとこういう言い方はマズいよね…ということが数限りなくあるようで、幅広い範囲での深い経験があって初めて、ある程度の信頼感が得られるという、なかなかに一筋縄ではいかないお仕事のようです。

 

 ワタクシ自身も多少英語ができるということを知られたばかりに、ちょっと通訳してもらえるかな!?みたいなことを気軽に言われたことがあるのですが、英語が多少できることと通訳ができることの深く広いキョリをコンコンと語って怪訝な顔をされたことが何度かあります。

 

 ということで、英語が多少できるようになったからと言って、カンタンに英語が話せるとノボせ上がらないのが身のためではあるのですが、だからといってそういうことを恐れてばっかりいたら、いつまでも話せるようにはならないワケで、イタイ目やシビレる場面に如何に遭遇するかということが”英語が話せる”ようになるための不可欠の過程であって、積極的にイタイ目に合わないといけないようです…