異文化コミュニケーション学/鳥飼玖美子

 

 

 日本を代表する通訳者である鳥飼さんが異文化コミュニケーションを語るということで、言語に関することかと思いきや…

 

 鳥飼さんはコロナ禍の”巣ごもり”で韓流ドラマにハマられたようで、その中で特に『愛の不時着』というドラマをキッカケにかなり多くの韓流ドラマを見られていて、異文化コミュニケーションに想いを致すことになったようで、そんな関係でこの本を書かれることになったようです。

 

 韓流ドラマを題材にしているからと言って、日本と韓国の文化の差異をどうのこうのというワケではないようで、そのドラマの中に出てくる、違う「文化」からきたキャスト間のやり取りについて印象に残ったところを取り上げておられます。

 

 鳥飼さんが「異文化」を取り上げているからといって、必ずしも国をまたいだモノに限られるワケではなく、育った環境が違えばそれはまさに「異文化」であって、身近なところで言えば、高校や大学に進学して違う中学、高校から集まってきた当初は「異文化」といえるワケですが、言ってる間に同じ「文化」を共有するようになる人もいれば、なかなか「文化」に入り込めない人もいたりして、そういう同じ空気を共有する過程を「異文化コミュニケーション」とおっしゃっているのかな、という気がします。

 

 言語が違えばモチロンですが、同じ言語を話しているが故に却ってバックグラウンドの違いが理解を阻害するということがあるということを、ドラマの場面を取り上げて指摘されているのが印象的で、自分のバックグラウンドのある意味特殊性を意識していないと、相手のことを理解できないケースがあり得るんだ、ということを身近な人を相手に話す時にも、少しは念頭に置いておいた方がよさそうです。

 

  鳥飼さんの著書だけに言語的なことを期待した人にはビミョーに肩透かしかも知れませんが、コミュニケーションの本質的な部分を語られているようで、なかなか深遠な内容だと思えました。